ワンダーランドと春の雪
小学生になった頃
両親の仕事の都合で町を離れることに
なったんだけど、
私自身は そんなに寂しくなかったにも関わらず、ユキちゃんはそのとき すごく泣いていた記憶がある。
「ユキちゃんは ほんとうに泣き虫だね。
またいつか会えるって!」
私はそう言って笑いながらユキちゃんの目から
溢れてる涙を吹いてあげた。
それでも涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして
私にくっついて離れようとしないユキちゃんは、お母さんに無理矢理引きはがされて家に帰っていった。
……どうでもいいけど、
私は何であのとき寂しいと思わなかったのかは
今でもよく分からない。
――とにかくそれが
私が最後に見たユキちゃんの姿だったんだ。