ワンダーランドと春の雪





そのとき。




「わっ?!」


突然何かに足を掴まれて、私はその場に
倒れてしまった。

足元を見てみると、一本の細い腕が私の足首を握っているのが見えた。




「人間、捕まえた!!」



一人が叫んだのと同時に、他のゾンビ達が
一斉に私に向かって手を伸ばしてきた。

このままだと引きずり込まれて、何されるか
分からない。





「やめてよ!放して!!」



男の子ばかりだからか、力が強くてどうにも
振り払うことが出来ない。



嫌だ。

こんなところで終わってたまるか!




私は咄嗟に、さっき実験棟で拾ったメスを
ポケットから取り出して、足首を掴んでいる
腕の上に思い切り突き刺した。






「ギャアアアアアアアッ?!?!?!」



ゾンビは悲鳴を上げ私を掴んでいた手を放し、
メスが刺さったまま牢屋の中に引っ込んだ。

するとさっきまでうるさかったゾンビたちも
騒ぐのをやめ、何人かは後ずさりしている。




「ごめん、あとで抜いてあげるから!」



自由になった私は立ち上がって

急いで牢屋から離れた。




ここにもジョニーくんはいなさそうだ。


不安だけど、もう少し奥まで行ってみよう。






と、また足を掴まれたりしないよう
気を付けながら歩いていると。






「あれえ。きみはいつかの野菜ちゃんじゃないか……えへへ」



どこかで聞いたことのある言い回しが耳に入ってきたので声がした方を見ると。

近くの牢屋の中にいる一人のゾンビが、
私に向かって手を振っていた。


顔中に包帯をぐるぐる巻きにして、
片目しか見えていない。





「……誰だっけ?」



えへへ、なんていう変な笑い方は覚えてるんだけど、それが誰なのかは思い出せなくて
そのゾンビを見つめていると。





「オー!その声は誰かと思えばジャパニーズ
ガール!!マジでゴブサタねー!!」



また別のゾンビが、変な喋り方で私に話しかけてきた。

この人は目元に包帯を巻いている。




「あなたも……誰だっけ?」



その特徴的な喋り方も知ってるような気がするんだけど……思い出せない。




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