指先に囚われて…
…―
辺りはすっかり日も落ちて、けれどほんのり空の色がまだわかる…夕暮れというのか、そんな曖昧な時間。
賑わった大通りを抜けて、薄ら街頭が照らす小道の一角にこじんまりとした小料理屋がある。
表には淡い浅黄色をした暖簾が掲げてあり、営業していることを知らせる。
そして、上にいてもちらちらと人の声が聞こえるたびに綺麗な透き通った笑い声も聞こえてくる…。
私は鏡の前に立ちいつものように、着物を着つけていく。
今日は白地に絞り模様が浮かんでいて、裾や袖には菖蒲があしらってある。