【短編】はくだく【BL】

「じゃあ、さっき言いかけたこと言ったら帰ってもいいよ」

「え…それ言わなきゃダメ?」

「言わなきゃダメ」

 尊はドアの前に立って、僕が出て行かないようにする。

「…抱きしめて」

「え?抱いて?」

「違うよ!」

「聞こえてたよ」

 尊は僕のそばに来てギュッと抱きしめた。

 僕も尊の腰に手を回して、抱きついた。

 尊の筋肉質な体は、やっぱりお父さんとは違って、尊の香りに包まれて、すごく今が幸せだと感じた。

「尊が朝言いかけたことも教えてよ」

「あ?ああ……好きだよ、馨」

 尊の言葉で、僕は恥ずかしくて湯気が出るくらい顔が熱くなった。

「僕も好き」

 呟くように言った。尊に聞こえたかはわからない。






 その夜、僕ら家族で母さんの誕生日を祝ってる中、尊一家が乱入してきたのは言うまでもない。

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