届屋ぎんかの怪異譚



だからまぁ、萱村が水月鬼を滅ぼしたと言われているが、実際には月詠の集落を滅ぼしただけだ。


月詠の集落以外の水月鬼が、上手く隠れているだけで、もしかしたらどこかにいるかもしれない。


絶対とは言い切れないが。



ま、それは置いておいて。



山吹は怪我をして動けなくなったところを、月詠に助けられたと言っていた。


それからは月詠のところへ足繁く通って、わたしや白檀といる時間も減った。


たまにわたしや白檀といるときも月詠のことばかり話していた。


わたしも白檀も、それが微笑ましいやら寂しいやらでね。


でも白檀は、羨ましいとも思っていたんだと思う。


あの子はそのときすでに、萱村に嫁ぐことが決まっていたから。



わたしも何度か萱村秀英に会ったことがあるよ。


凛々しい面立ちだったが、それなのにどこか気の弱そうな目をしていた。


けれど気さくな方でね、わたしたち三人のお喋りに混じったことも何度もあった。



けれど、それがいけなかったんだろうね……。


< 203 / 304 >

この作品をシェア

pagetop