届屋ぎんかの怪異譚
一見するとどこにでもいる浪人のような風貌の青年だが、しかしその纏う雰囲気は明らかに常人と異なっていた。
それは例えるなら、研ぎ澄まされた刃のような――鋭さと、冷たさ。
「怪我は」
低い声で再度問われて、
「あ、……大丈夫、です!」
と、銀花は慌ててしどろもどろに答える。
そのときになってようやく、青年に横抱きにされていることに気が付いた。
ようやく混乱の収まってきた頭で、この人が助けてくれたのだろうか、と銀花はぼんやり思う。
それからがしゃどくろの存在を思い出して、銀花は慌てて辺りを見渡した。
がしゃどくろは、すぐそこにいた。
だが先ほどまでと違うことが一つ。
――骸骨の右腕が、肩より先をすっぱりと切り落とされていたのだ。
地面に落ちたどくろの右腕を見て、先ほどの爆音はこれかと思い至り、銀花は青年の顔をまじまじと見た。
「……あれ、あなたがやったの?」