届屋ぎんかの怪異譚



「ありがとう、猫目」と言って銀花が微笑むと、「実際に銀花を守るのは俺らだけどな」と、今様と二藍がぼやく。



「二人とも、お願いね」



銀花が二匹の頭を撫でながら言うと、二匹は声をそろえて「まかせろ!」「言われなくてもわかってる」と応えるが。



「頼んだよー、君たち」

「うるさい」

「猫目に言われたくない」

「何だよこの扱いの差は……」



一応、主人は俺なんだけどなぁ。と言ってうなだれる猫目の背を、風伯がぽんぽんと慰めるように叩いた。



「銀花が相手じゃあ勝ち目ないよ。諦めなよ」


「風伯は優しそうで辛辣だね」



そのやりとりに、銀花と二匹が思わず吹き出した。



三人と二匹は賑やかに笑いながら、江戸の空を渡った。



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