新婚の定義──嘘つきな君と僕──
中学時代、同じ吹奏楽部の後輩だった水野は、レナに好意を寄せていた。

高校生になっても水野はレナのいる写真部に入部し、レナが2年の秋に部長になった時、水野は副部長をしていた。

高3の夏休み前に学校を辞めてロンドンに渡ったユウは、その後のことを知らない。

(まさかな…あれから何年経ってると思ってんだよ。もう、いい大人だぞ?)

離れている間のレナのことを知らない。

須藤との婚約のことだけは聞いたが、それ以外のことは、よく知らない。

(レナは、オレと付き合うまで誰とも付き合ったことがないって言ってたから…それだけは確かなはずだけど…。)


ユウは、時折笑みを浮かべながら水野と今日の撮影の段取りを話しているレナを見る。

(随分楽しそうに話すな…。オレの方、見ようともしないよ…。)

ほんの些細なことなのに、ユウはレナのことが気になってどうしようもない。

「ユウ、どうしたの?」

ケイトに声を掛けられ、ユウはハッとして振り返る。

「ああ、いや…なんでもない。」

「彼女、水野と知り合いなの?」

「学生時代の後輩なんだ。」

「へぇ。懐かしいと、勘違いするかもね。」

「えっ?!」

「昔好きだった相手なら、尚更でしょ?」

ケイトの言葉に、ユウは拳を握りしめて、日本語で小さく呟いた。

「違う…。オレのレナへの気持ちは…勘違いなんかじゃない。」

「えっ、何?」

「…なんでもない。」

ユウはレナと水野に背を向けて、メンバーの元へ向かう。

そんなユウの様子を、タクミは少し離れた所でじっと見ていた。

(すっごく気になってるくせに…。)



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