新婚の定義──嘘つきな君と僕──
「えっ?!」

「どっちも私が言った言葉。ユウの知ってる私だけが、私のすべてじゃないよ。ユウならわかるでしょ?私にユウの知らない過去があっても…秘密にしても、嘘ついても…私は、私なの。嘘をついた私はもう、愛せない?ユウは…どっちの私を信じるの?」

レナはユウに背を向けて自分の部屋へ入った。

リビングではユウが呆然と立ち尽くしていた。

(今の…ホントにレナなのか…?まるで別人みたいだった…。)

今までに見たことのないレナの冷たい表情。

この1年間、一緒に過ごしてきた時間を否定するように、初めての恋なんて全部嘘だと言い放つ冷たい声。

(どういうことなんだ…?あんなレナ…オレの好きなレナじゃない…。小さい頃からずっと好きだったレナじゃない…。)



ユウに嘘をついた。

今まで大切にしてきたユウへの想いを自ら踏みにじるような、酷い嘘をついた。

(ユウに嫌われても仕方ないような酷いこと、言っちゃった…。)

今まで胸に押し込めてきた不安が抑え切れなくて、自分の過去を話さないくせに、レナの過去を知りたがるユウのずるさに、悲しくなった。

(ユウが私を愛して、信じてくれてるのなら…どっちがホントの私か、わかるでしょう…?)




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