新婚の定義──嘘つきな君と僕──
「返すの忘れてオレが持ってた。ユウには渡せないから、あーちゃんに会ったら直接返そうと思って。」

「そっか…。そうだね。」

レナはタクミに差し出されたボールペンを受け取り、バッグにしまう。

タクミはレナの耳元に、くっつくくらい顔を近付け、笑いながら小声で囁く。

「旦那に内緒ってのもなかなかいいね。またスタジオで。」

「あっ、うん…。」


手を振ってレナを見送るタクミの後ろ姿を、ユウは呆然と見ていた。

(どういうことだ?なんだあの親密な感じ…オレの知らない場所で、レナはタクミと二人で会ってるのか?!)


タクミは何事もなかったようにスタジオに戻ってきて、茫然としているユウの姿を笑いをこらえて見ていた。

(驚いてるよ…。ユウのヤツ、まさかタクミとレナが?!って思ってる…。)

過去の男ではないタクミの登場に、ユウは混乱していた。

(タクミのヤツ…冗談じゃなかったのか?)

自分だけのレナだと思っていたのに、気がつけばレナの回りに、何人もの男の影がちらつく。

(レナ、一体何人の男と…?)

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