新婚の定義──嘘つきな君と僕──
「今日の午後、`アナスタシア´の撮影だろ。その後の話、聞いてるか?」

「その後の話?」

レナはこの後、モデルとして`アナスタシア´の新しいカタログとポスター用の写真を撮影することになっているが、それ以外は何も聞いていない。

「何かありましたっけ?」

レナは手帳を開いて首を傾げる。

「聞いてないか…。ヒロさんから連絡もらってな。自分のアルバムのジャケットにレナの写真を使いたいから、オレに撮って欲しいって。」

「えぇっ?!」

(初耳なんですけど…!!)

「なんでも、秘密っぽさの漂うような写真にしてくれって。顔が見えるか見えないか、レナだってわかるかわからないかくらいの写真が欲しいんだってさ。できれば、いつものレナとはまったく違うレナを引き出してくれって。」

「それ…私を使う必要あるんでしょうか?」

「まぁ…あるからそうするんじゃないか。」

随分具体的なのに意図が見えないヒロの注文。

「そんなことできるのかな…。」

モデルとは言え、レナは他のモデルのように、カメラに向かって、次々と表情やポーズを変えたりするのは苦手だ。

(こんなんで、よくやってこれたよね…。)

きっと他のブランドや雑誌のモデルなら、即刻クビだなとレナは思う。

「そんな心配そうな顔するな。オレがちゃんと撮ってやるから、任せとけ。レナを撮らせたらオレの右に出る者はいない。」

須藤は自信たっぷりに笑って、レナの頭をクシャッと撫でた。
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