新婚の定義──嘘つきな君と僕──
ユウが店員を呼んで、このまま来ていけるようにタグを切ってもらい、会計を済ませて、着てきた服を紙袋に入れてもらった。

店員が紙袋を手渡しながら、控えめに声をかけた。

「あの…アリシアさんとユウさんですよね?」

「ハイ…。」

レナは照れ臭そうに返事をする。

「お会いできて嬉しいです!こちらには観光で来られたんですか?」

「二人とも仕事で来たんですけど、今日は休みなので、初めての神戸観光です。」

ユウが紙袋を受け取りながら言うと、店員は嬉しそうに笑った。

「そうなんですねぇ。楽しんで行って下さい!神戸はいいところいっぱいありますから。」

関西訛りの店員の言葉に、ユウとレナは顔を見合わせて微笑む。

「ホントに新婚旅行の続きみたいだな。」

「うん。なんか嬉しいね。」

ユウはポケットからスマホを取り出し、店員に渡す。

「せっかくなんで、記念に1枚撮ってもらっていいですか?」

「ハイ、喜んで!!」

店員に写真を撮ってもらいユウがスマホを受け取ると、店員がデジカメを手におそるおそる尋ねる。

「あのー…店舗に飾りたいんで、1枚撮らせてもらっていいですか?」

「私はいいけど…ユウは大丈夫?」

「うん。全然問題ない。」

「じゃあ、こんな普通で良ければどうぞ…。」

「ありがとうございます!!」

ユウとレナは店員にデジカメで写真を撮られた後、求められた握手に応じてから店を出た。

「なんか、新鮮。不思議な感じ。」

「そうだなぁ。レナが店で`アナスタシア´の服買うことなんて、まずないもんな。」

「これ、ありがと。似合ってる?」

「うん、すげー似合う。やっぱり、オレの奥さん世界一かわいいな。」

「ユウったら…。」

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