新婚の定義──嘘つきな君と僕──
撮影の仕事があと少しで終わる頃に、マユがスタジオに現れた。

マユは撮影が終わるのを待って、レナに近付いてくる。

「レナ、お疲れ様。」

レナが振り返ると、マユと見慣れない男性が立っていた。

マユには珍しいパンツスーツと、ヒールのないパンプス姿に、レナは、あぁ、と納得する。

(そっか…妊婦さん…。)

「お疲れ様。今日の撮影、終わったけど…どうかしたの?」

「今度の密着取材に同行する記者を紹介しようと思って。」

マユがそう言うと、マユの少し後ろにいた男性が、にこやかに笑ってレナを見た。

「こんにちは。相川達朗です。」

「はじめまして…。片桐怜奈です…。」

レナが挨拶すると、その記者はおかしそうに声を上げて笑い出した。

「はじめましてじゃないよ、久し振りだろ。」

「えっ?」

レナは驚いて目をパチパチさせる。

「あ…。」

「思い出したか?」

「相川くん…。」

隣でその様子を見ていたマユが、不思議そうにレナに尋ねる。

「あれ?知り合い?」

「うん…大学時代、バイト先が一緒だった。」

「どんなバイト?」

「タウン情報誌の編集部。」

「へぇ…。初耳。」

「懐かしいな。レナが写真撮ったり書類整理したり雑用みたいなことして、オレは取材のアシストしたり投稿コーナーの記事を作ったりしてたんだよな。」

「うん。」

「そうなんだ。じゃあ、レナの人見知りの心配はなくなったってわけだ。」

「相変わらず人見知りしてんのか。」

「まぁ…。」


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