新婚の定義──嘘つきな君と僕──
「片桐さん、突然で悪いんだけど、頼んでいいかな?」

レナが仕事が終わって帰り仕度をしていると、須藤の代理で事務所を切り盛りしている先輩の川田が声をかけた。

「どうしました?」

「山根くん、急病だって。この後の撮影無理らしい。僕もこの後まだ撮影の予定が入ってるんだよね。片桐さん、お願いしてもいい?」

「まぁ…大丈夫ですけど。」

「音楽雑誌の撮影らしいよ。英語話せる人がいいんだって。ちょっと時間ギリギリだけど、これ詳細ね。じゃあ申し訳ないけどよろしく。」

「わかりました。」

レナに急な仕事を引き受けてもらうと、川田は慌てて次の仕事に向かう。

(私も行かなきゃ…。)

川田から受け取った時間と場所のメモを見て、レナも慌てて事務所を出た。


(ちょっと帰りは遅くなりそうだけど、きっとユウも遅くなるんだろうし…。)

家に帰って夕飯を用意して待っていても、最近ユウの帰りは真夜中になることが多い。

(夕飯作ったって、ユウが帰って食べてくれるかもわからないし…どうせ一人で待って…待ちくたびれて、一人で寝るんだもん…。遅くなっても仕事してる方が、まだマシだよね…。)

カメラの入った重いバッグを肩にかけ、指定されたスタジオへ足を運んだ。
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