新婚の定義──嘘つきな君と僕──
レナが帰宅すると、時刻は11時を過ぎていた。

ユウはリビングのソファーでうたた寝をしている。

(今日は早かったんだ…。)

レナがキッチンに行くと、水切りかごにはキレイに洗われた食器が並んでいた。

(食べてくれたんだ…。)

レナが水を飲んでリビングに戻ると、ユウが眠そうな目をこすりながら起き上がる。

「おかえり…。」

「ただいま。遅くなってごめんね。」

「うん、お疲れ様。」

「夕飯、昨日の残りで悪かったけど…ちゃんと食べてくれたんだね。」

「うまかったよ。」

「良かった。」

ユウはソファーに座って、レナを手招きする。

「ん…?」

レナが近付くと、ユウはレナを長い腕で抱きしめた。

「レナ…最近、寂しい思いばっかりさせてごめんな。」

「……ううん…大丈夫だよ。私は…ユウがいてくれたら…それだけでいいの。ユウが、私だけのユウでいてくれたら、それだけで…。」

レナはユウの温かい胸に顔をうずめた。

一度は止まったはずの涙が、また溢れ出す。

(ユウは…勘違いなんかで私を選んでくれたんじゃないよね…?)

「オレはどこにも行かないよ。オレは、レナだけのオレだから。」

「うん…。」

(私…ユウを信じて、いいんだよね?“誰に何を言われても、オレにはレナしかいないよ”って…言ってくれたよね?)

胸に顔をうずめて涙を流すレナの髪を優しく撫でながら、ユウはただレナを抱きしめた。
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