自惚れ男子の取説書【完】
「…絶対無理だと思った」
驚きと安堵からかニヤっと軽く口角をあげると、こちらに目をやる松山さん。
「ふふっ、良かったです。今日は他に検査も無いですし、ゆっくりできますよ。後で身体拭きと、少し起き上がってみましょうね」
「……っ!もう起きるのか!」
「そうですよ。じゃんじゃん起きないと、筋力落ちちゃってつらくなってくばっかりですからね」
昔のような絶対安静の時間はかなり短くなった。
それより早々に離床を進める方が回復も早く、それを促し進めていくのが私達の大切な役割だ。
予想してなかった言葉に露骨に落ち込む松山さんは、反論する気力もないみたい。観念したのか深いため息をこぼした。
「少しずつですから、ね」
私の言葉に、”わかった”というようにひらひらと片手を挙げ応じると再び目を閉じた。