自惚れ男子の取説書【完】

2人で別々の袋を提げ、コンビニを出て生暖かい風に晒される。と、私達が来た方向…病院の方から2つの影が近づいていた。


「ちょっと…待ちなさいよ」

「あぁ?腹へってんだから急げよ」


その不機嫌そうなテノールに思わず足がすくむ。

店先の煌々とした電気の下では、どうにも隠れようがなく。とっさに俯いた視線の先で、細長い影がピタっと動きを止めた。


「こと………辻、さん?」

数週間ぶりに聞くその声はどこかよそよそしく小さくて。それでも私の心をかき乱すには十分だった。
< 192 / 362 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop