自惚れ男子の取説書【完】
2人で別々の袋を提げ、コンビニを出て生暖かい風に晒される。と、私達が来た方向…病院の方から2つの影が近づいていた。
「ちょっと…待ちなさいよ」
「あぁ?腹へってんだから急げよ」
その不機嫌そうなテノールに思わず足がすくむ。
店先の煌々とした電気の下では、どうにも隠れようがなく。とっさに俯いた視線の先で、細長い影がピタっと動きを止めた。
「こと………辻、さん?」
数週間ぶりに聞くその声はどこかよそよそしく小さくて。それでも私の心をかき乱すには十分だった。