自惚れ男子の取説書【完】
「そうですか?念のため病棟の人、呼びましょうか。車椅子で帰ります?」
「ありがとう。でも大丈夫ですよ、本当に眠いだけなの。歩いて帰れるわ」
確かに歩けそうではあるけど、ふらつく現場を見た以上ほおってはおけない。
「あの…よろしれば私と一緒に帰りませんか。私もあとは自分の病棟に帰るだけですし」
思わぬ申し出だったんだろう。一瞬ぽかんと固まる女性はすぐに優しく微笑んだ。
「じゃあ…ご迷惑じゃなければ。いいかしら?」
「とんでもない。ご一緒させてください」
女性につられるように微笑み返すと、ゆっくりと立ち上がるよう促した。