自惚れ男子の取説書【完】
「お前なぁ…名前位言え。辻さん相手に何緊張してんだ」
「えっ、緊張させちゃいました?すみません」
「違う違う。こいつが女慣れしてねぇ「とっ、父さん!!」」
慌てて松山さんと私の間に入り込むよう立ち上がった息子さんは、耳まで真っ赤にさせて分かりやすく照れていた。
そんな純粋な反応に少し驚きつつも悪い気はしない。思わずふふっと笑いがこぼれると、ふと息子さんと
目があった。途端、露骨に視線を外すのだから目立って仕方ない。
「辻さんに会いたけりゃ見舞いに来るこったな」
「なっ……!看護師さんに失礼だろ。やめろよ」
「松山さん、息子さんからかっちゃダメですよ。あの…こうしてゆっくり話せる位回復したのも最近なんです。お忙しいとは思いますけど、息子さんいらっしゃったら松山さんも頑張れると思います」