自惚れ男子の取説書【完】

「今日もしっかり歩いてましたね。傷の痛み、どうですか?」

「うーん…痛み止めは要らない位かな。まぁまぁだね」

小太りだった身体はすっかり痩せてしまったけど、こうして笑顔が見られるようになってきたのもつい最近だ。

うんと頷く松山さんの向こう、奥さんと向き合うように座る少し丸い人影にようやく目を向けた。

「あ、申し遅れました。松山さんの担当させていただいてます、看護師の辻です」

「あぁっ…ど、ども。息子で…す」

私につられるように慌てて頭を下げた男性は、30代そこそこという所か。体格は術前の松山さんを思わせるけど、少し気弱な雰囲気は父親とは似ても似つかない。
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