自惚れ男子の取説書【完】
「美沙、落ち着いて。私なら大丈夫だし、寧ろ先生巻き込んじゃって申し訳ないくらいなんだから」
どうどう、と宥めると周囲の視線も気になったのか。美沙は大人しく腰をおろした。
「うーん…あの人、辻さんのこと諦めきれてないと思うんだよね。俺に相当な殺意送ってきてたし」
「いや、そんな訳ないですよ。多分私が電話でなくて、単純に腹が立ってただけじゃないですか?」
そうでなければ困る。美月さんがいながら私とどうこうなんて…小田さんがそんな最低男だとは思いたくない。だから放っておいてほしかったのに…。
「ふーん…まぁどんな事情か知らないけど、二人して納得できてないみたいだけどねぇ」
黙って聞いていた美沙はグラスを置くと、宙を睨んだまま呟いた。
「どんなも何も…全部あいつが悪いんじゃない」
「んーん。私が悪いんだよ。小田さんに勝手に期待して頼っちゃってさ…きっと切り出せないようにしてたんだと思う」