自惚れ男子の取説書【完】
「先生、ごめんなさい」
「ん?」
「本当はすごく周りのこと見てますよね。今だって私のために考えて話してくれた訳で…」
単なる勘、なんだとは思う。
それでも呪縛から解放されるよう、前に進めるように私のために言ってくれてるのがわかったから。
「だから今までの分ごめんなさい…って何か変ですかね?」
自分で言いながら思わずぷっと吹き出すと、名波先生も顔を見合せ笑いだしてしまった。
「くはっ…!辻さんそれ失礼でしょ?まぁようやく俺の本来の魅力に気付いたって事ね、うんうん」
今こうして慰められてるのがほんと不思議。
まるでお兄ちゃんみたい…なんて微塵も感じた事なかったのに。しみじみ振り返ると、思わず謝りたくなってしまったのだ。
「何で琴美が謝るよの。普段の行いが悪いんだから、敬遠されたって仕方ないっての!」
「え、何それ横田ちゃん!もしかして俺のこと避けてたの?ひどーい」
「それくらい気付きなさいよ!ほんっと空気読めないんだから」