自惚れ男子の取説書【完】

 2


マンションのエントランスを抜け、階段をおりるとふと立ち止まった。

右側の道は、建物沿いに垣根が続く。最近業者の人が来たおかげで、延び放題だった枝がふんわりと可愛らしいフォルムに整えられたところだ。小さな白い花がお気に入りで、マンションの決め手となった1つだ。

一方の左腕の道は…駅への最短ルート。もう1ヶ月位は使っていない。


いつまでこんな事してなきゃなんないんだろう…。


自分で決めたはずなのに、無意識に終わりを探してしまう。思わず深いため息が出るけど、左を選ぶことはしない…余計に辛くなるのがわかってるから。


現実に引き戻すよう時計を見ると、約束の時間まで余裕がある。

花の香りを楽しむように1つ深呼吸すると、止まっていた足を右側へとむけゆっくり歩き出した。
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