自惚れ男子の取説書【完】
何期待してたんだろう…りっちゃんの言葉に一瞬安心しちゃうなんて。
浅はかな自分の本音に心が軋む。
いくら口で言ってても、私はまだどこかで期待しちゃってるんだ。
ヴヴッヴヴッヴヴッ
さっきとは違う振動がテーブルから伝わり、びくっと肩が揺れる。
「ん?あ、石川くんから…ごめん、出てもいいかな?」
「どうぞ」と目配せすると、りっちゃんは少し隠れるようそっと手を当て電話に出た。
「もしも『律子っ…!?』」
りっちゃんの声に重なり、かなり慌てた懐かしい声が電話から存分に漏れる。
『律子っ?なに、なんで小田さんの事気にしてるの!?』
「ちょっ、石川くん落ち着いて…」
『落ち着いてるよっ!だからメール返せたんだけど、やっぱり返事待てなくて!』
「うん、だからそれはね」
どう考えても落ち着きのない石川くんの声は、私達のテーブルいっぱいに響き渡った。