自惚れ男子の取説書【完】
ヴヴッ…ヴヴッ…ヴヴッ…
規則的な振動が携帯電話を揺らす。
「あっ、来たよ。ちょっと待ってね…っと」
メールしてから5分足らず。早々に石川くんからの返信があったようだ。
「で?なんて?」
「んー…石川くんは何も知らないみたい」
身を乗り出していた美沙は、気が抜けたようにドサッと椅子に体重をかける。
それにつられるよう、無意識に力んでいた私もふと肩の力が抜けるのを感じた。
「なーんだ。”何も”ってそれ、ただ聞いてないってこと?」
「うん。石川くんも小田さんとは同じ班じゃないから、全部把握してるわけじゃないみたいだけど…」
「そっか、そうだよね。絶対知ってる訳じゃないか…」