自惚れ男子の取説書【完】
ようやく地に足がついたのは、ふんわりと柔らかな布団の上で。小田さんのベッドに投げるように下ろされると、逃げる隙もなくまた縫い付けられるよう、上から覆い被されてしまった。
「ちょっ…!小田さん、こ、怖い!ねぇっ!」
「当たり前だ。怖くやってんだから。お前がどんだけ俺をバカにしてんのか思い知らせてやんねぇとな」
「……えっ、だって……え?」
どうしよう、泣きそうだ。
怖いとか。小田さんの必死さとか。自分のバカな勘違いとか。
色々がぐちゃぐちゃに入り交じって鼻がツンとなる。
「良いこと教えてやろう。俺は化粧品の営業だ。合コンの時言ったんだけどな。お前がどんだけ俺に興味なかった、よーくわかったわ」
「え……」
「営業だからな、サンプル品くらい山のように持ってるっつーの。はい、これで1つ解決な」
小田さんを追い詰めるはずだった切り札が、逆に自分の首をしめるなんて。
それどころか小田さんの怒りはピークのようで、きれいに笑う顔が非常に怖い。