自惚れ男子の取説書【完】
カチンときた勢いと、やり場のない恥ずかしさ。それを誤魔化すように、背中に回した手を小田さんの広い背中にぶつけた。
私が悪い、けど……私だけのせいじゃない!はず!
そんな勝手な言い分がまかり通る訳もなく。私が叩くドンという振動に身を任せていたかと思うと、
「よーくわかった」
途端、さっとしゃがみこんだ小田さんは私の腰に腕を巻きつけたかと思うと、私の身体は宙に浮いていた。
「重っ……」
「んなっ……ちょっ、やめて!ほんっと失礼!下ろして!」
まるで俵でも担ぐような色気もない抱え方。
さっき以上に強く主張するよう必死に小田さんの背中を叩くけど、その背中はびくともしない。
小田さんは片手で器用に私の靴を脱がせると、無造作に部屋の隅へ投げやった。
お気に入りの靴なのに…とか余計な事を言う余裕もなく、ずんずん部屋の奥へと連れ込まれていく。