自惚れ男子の取説書【完】
エピローグ
ガチャッ
金属の鍵が回る重い音の後、コツコツと革靴の音が微かに聞こえる。
「……お、おかえりなさい」
「ん」
緊張気味な私とは違い、出迎えられた小田さんはなに食わぬ顔でネクタイを緩める。
あの日以来、海外出張や残業続きの小田さんとはゆっくり会えていなかった。たまに連絡を取る以外、甘いひととき…なんて考えそのものが甘いって位で。
それが急に自宅にきたと思えば「明日うちで出迎えろ」…だ。鍵だけ渡してすぐ帰っちゃうし、強引というか自由というか。
同棲してるみたいなシチュエーションに、こっちは動揺しっぱなしなのに…この男。
ちょっとは喜ぶとかさ……ちょっとくらいさぁ…
いかんいかん。ここで怒ったら後が怖い。