自惚れ男子の取説書【完】


「家まで知られて、名前まで知られたら俺もう逃げられないじゃん?いるんだよね…勘違いする女。それで勝手に押し掛けてくるやつ。んま、あんたの名前知っとけば、何かあってもすぐ通報できるし」




かっちーん



男Aの話が終わるまでに、私の怒りはゆうに沸点を越えていた。


「ふっ…ふざけんなっ!!そこまで非常識な事しないわよ!大体、なんなの?自分がどんだけモテると思ってるのよ?勘違いはどっちよ!!あんたみたいな自意識過剰男、ありえない!!絶対好きになんてならないんだから!!」



「”そこまで”…って。自分で非常識な事したのはわかってるんだな」

ぜぇぜぇっ…と息を荒くする私に、鼻で笑う男が追い討ちをかけた。

堪忍袋の限界。


立て掛けてあった自分のカバンをひっつかみ、玄関があるであろう扉を開けると、ビンゴ。キレイに揃えられた靴を履くと、バタンと乱暴に扉を開けた。

嫌がらせで確認してやった表札には、案の定何も書いていなかった。


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