もう一つのダイヤモンド
そして、その送別会は、最終金曜日となった。4月1日が月曜だから本当にラストの日。隼人さんと一緒だから、ちょっと緊張するけれど、たぶん話す機会はないかもしれないなぁと思っていた。


そして、隼人さんが勤務する最終週。

私は隼人さんの外来を受診する予定で、外来からの呼び出しを待っていた。

隼人さんの午後の外来は今日が最後で、あとは午前が一回あるのみ。

隼人さんは昨日、ナースステーションで話しかけてきた。

「泉川さん、明日の午後の外来受診できる?術後3ヶ月のレントゲン確認したいんだけど。」
と。

仕事の話かと思っていた私は、慌てて返事をする。

「あっ、…はい。」

「じゃあ、この間みたいにレントゲン撮ってから受診して。」

「分かりました。」

そして、隼人さんは耳元でささやいた。

「足、良さそうなのは知ってるけど、レントゲンチェック。他の先生には引き継ぎたくないし。」

…『知ってる。』

そう、プライベートで一緒に過ごす時、歩く時間が長かったり、冷えたりするときは、隼人さんは足の様子を気にかけてくれる。

最近は、一緒に歩いても痛くなることはないし、前より長距離を歩くこともある。

プライベートを思い出して赤くなる私に、思い当たることがあったのか、クスッと笑って病室へと向かって行った。

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