空と君との間には
互いに声を潜めて話す2人の会話。

周囲には何を話しているのか、わからない。

不穏な空気が漂う。


「示談だなんて姑息な手を使って、揉み消したつもりかもしれないが」

浅田の顔がひきつる。


「何なら此処で暴いたっていい」


「随分、ご機嫌斜めね」

浅田の声が上擦っている。


「朝から、あんたに会って機嫌が良いわけないだろ」


「ご挨拶ね、あなたの正体も暴かれないよう気をつけるのね」

浅田が捨て台詞を吐き、エレベーターに乗る。


「ふざけたことを……」

結城は深い溜め息をつく。


「……俺はゴーストライターなんかやってない」

結城はポツリ呟き、舌打ちをする。


「結城さん」


紗世の声に気づいて、結城は「!? 紗世っ」驚いたような顔をする。


「……まだ居たのか?」
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