冷たい彼-初恋が終わるとき-
「それに椎名さんはまだ乙樹のことが好きだ。違うかい?」
「え」
唖然とする私に、落合君はさも当然のように言う。
「僕と乙樹は幼なじみなんだ」
「…お、幼なじみ?」
桐生君と幼なじみで、小田切君とも幼なじみなの?
「うん、だから椎名さんがよく乙樹を見てたのも知ってるよ。視線を感じて辿ればいつもそこには椎名さんがいたから」
そんなに見つめていた自覚がないので顔中に熱が迸る。
まさか見られていたなんて。
「まだ乙樹の事が好きなのに蓮と付き合ってるの?」
しかし全て言い当てられてすぐに熱は冷める。
呼び出したのは、幼なじみをタブらかしたと私に怒りをぶつけたいからだろうか。
「そうだよ」
否定することはできない。桐生君に惹かれる一方で、小田切君のことがまだ好きだから。どっちつかずで、ずっと彷徨っていた。