冷たい彼-初恋が終わるとき-
「蓮も幸せになるべきだよね」
「…うん、私もそう思う」
昨日見た、あの目が脳裏を過る。
ずっと三人を見てきた落合君も気付いていたと思う。
あの孤独の深淵に沈吟する目に。
思い出して、また鼓動がドクンと音を立てた。
「蓮って短気だけど、根はお人好しなんだよ」
「…桐生君は優しい、よね」
「それは違う。何とも思ってない人間に優しくできるほど、蓮は甘くない。椎名さんが優しいって思うなら、それは椎名さんだからじゃないかい?」
「…っ」
じわりじわりと迫り上がるのは、曖昧だけど、温かいもの。微かに締め付けられる感覚がするけど、それは決して嫌なものではなかった。