冷たい彼-初恋が終わるとき-
「き、喫煙って辛いって聞くけど、桐生君も辛かった?もしかして私のせい?お、お節介だったよね」
「…いや、元々ただの安定剤みたいなところもあったからな。今は“代わり”がいるから苦でもなかった」
「か、わり?」
ポカンとする私に桐生君は含み笑いで「花霞」と言った。
まさかダバコの代用品が私だなんて。苛立ってるときはいつもダバコを吸ってたのに、いつしかその代わりが私になってたなんて。
「…今はお前がいるから、落ち着く」
耳に掠める熱っぽい吐息に心の奥が震えた。
むくむく膨れあがるこの感情が、私の胸を高鳴らせる。
まだ小田切君の事は忘れられないし、好き。でも桐生君のことも好きになってしまった。一時の感情なんかじゃなくて、確かにこの感情は本物だった。錯覚なのかと慎重になればなるほど、桐生君が好きだと自覚してしまう。
例え叶わなくても今だけは桐生君という存在を独占したくて、私は彼女と言う名目で桐生君に縋った。
彼の香り包まれて。