夜人【ヨルヒト】さん

バイクが、滑るように家の前に止まる。

ユキオミの背後から降り、借りたヘルメットを脱ぐ。

「あの……すいません、ありがとうございました」

頭を下げると、ユキオミは大げさに手を振った。

「いやいやこれぐらいは全然。何も怪我とかなくてよかったよ」

トキコの手からヘルメットを受け取り、車体に固定しながら笑う。

屈託のない笑顔が、恐怖に縮み上がった心を和ませてくれた。

「じゃ、家入るまで見届けて帰るよ」

「はい……本当にありがとうございました」

もう一度深く頭を下げ、トキコは門を開けて中に入った。

玄関のドアを開けながら振り向くと、ユキオミが手を振っているのが見えた。

会釈を返し、トキコは家に入った。
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