夜人【ヨルヒト】さん
無言で靴を脱ぎ、玄関から上がったところで足音がした。

「トキコ? ちょっと遅すぎるんじゃない?」

居間の方から声が聞こえてくる。

棘のある母親の言葉を無視し、トキコは台所に入った。

冷蔵庫からコーラの缶を取り出し、すぐに台所を出る。

階段を登り始めると、背後から声が追いかけてきた。

「スカート泥だらけじゃない?! 一体何を……」

言葉が終わる前に自室に入り、トキコはドアを閉めた。

深く息を吐き、床にへたり込む。

(今日は……なんだったんだろう。疲れた……)

喉が渇ききって痛む。

プルタブを押し開け、炭酸を喉に流し込んだ。
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