夜人【ヨルヒト】さん
ガチャ、ガチャと不気味な音が窓の方から聞こえる。

バイクまで辿り着き、ユキオミに渡されたヘルメットを被りながらトキコは振り向いた。

窓に、黒く2つの影が見えた。

乱れた髪の毛が作り出すシルエットが、不自然に揺れている。

バイクの排気音が響き渡った。

「早く乗って!」

促され、トキコはユキオミの後ろに乗った。

「しっかり掴まって!」

怒鳴り声と共に、ユキオミの足がペダルを踏み込む。

急発進したバイクが、轟音を立てて家から遠ざかる。

ユキオミの腰に手を回し、トキコは身体にかかる衝撃を耐えた。

逃れた安堵と、改めて襲いかかる恐怖に目を閉じる。

涙が零れた。

声を殺し、唇を噛み締めてトキコは泣き続けた。
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