夜人【ヨルヒト】さん
嘲る嗤い声が、チサエの朦朧とした意識に響いた。

水に押し込まれる。

(もう……だめ……)

抵抗する力が抜けていく。絶望的な恐怖が、心を占めていた。

髪の毛を、今度は引っ張られる感触があった。

顔だけを水面に出し、だらしなく息をする。

「チサエ、もう少し頑張らなきゃ。私はもっとやられたんだから」

血なまぐさい息が吹きかけられる。

エミカの手が離れた。

「エミカさんも同じことをされたの?」

「うん。トイレで。洋式に顔突っ込まれて」

夜人とエミカの会話が遠く聞こえる。
< 61 / 199 >

この作品をシェア

pagetop