二人の『彼』


台所の扉を開けると、そこに先輩はいなかった。



今日はまだ寝ているのだろうか?



先程階段で音をたててしまったのを後悔する──と、そこで気づいた。



見ると、先輩の履き物がないのだ。



こんなに朝早くからどこへ出掛けたのだろう。



何か事件に巻き込まれてなければいいけれど。



まあ。



タイムスリップを経験した俺らにとって、それ以上の事件なんて、よっぽどでない限りないだろうが。



でもあえて言うならば。



根拠のない予感が妙に府に落ちていて。



何かが動き出そうとしている気がしてならなくて。



そしてそれに怖じ気づいている俺がいるんだ。



ふと、窓の方へ視線を向けると、色づいた桜の花びらが1枚、隙間から入ってきた。
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