ラブモーション
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・っ」
何度呼んでも蘇るはずがないのだ。
死んだ人間だ、兄は。
だけど、無性に会いたくて、無性にあの温もりを直に感じたくて。
自分の体を包み込む温かい腕をぎゅうと握り返した。
すると、ふっと私の耳に吐息がかかり、くすくすと笑う声が聞こえる。
今、誰が私の体を包んでいるか、ようやく分かった。
「小鳥は籠から逃げちゃ駄目だろ。」
冷たい言葉が、私の胸につきささる。
ようやく分かった。
永倉くんと兄を重ねてしまう理由が・・・。
永倉くんの瞳は、死ぬ直前の兄の瞳に
よく似ていた。
私が殺す直前の兄の瞳に、似ていたのだ。