この気持ちは、気付かれない。
「…皐月、もうちょっと食べたら?」
「ええ?お腹いっぱいだよ…」
「は?全然食ってねーよ?」
色々頼んだからテーブルにはたくさんのメニューが並んでる。オムレツ唐揚げ枝豆鉄板焼き焼き鳥…
全部少しずつは食べたんだけどな。唐揚げを食べたからか、胸焼けして少し気持ち悪い。
「…ねえ、本当に心配なの。大丈夫なようには見えないのよ。なにがあったの?」
心配そうに、悲しそうに眉を下げて翔子が聞いてきた。なんだか泣きそうな顔だ…
「……。」
「食欲なくしてるんでしょう?それに隈もひどい…寝てないの?」
「ん…」
正面にいる翔子の顔が見れなくって、わたしは膝に乗せた自分の手を見つめた。
「悩みがあるなら聞くよ、話せないようなこと?」
その、辛そうな声を聞いてあの日を思い出した。優衣が、泣きながらわたしに言ったこと。
ーーどうして頼ってくれないの。
翔子も、そう思ってるんだろうか。
でも、本当に頼ってもいいの?受け止めて、くれる?
「…もう、何から話したらいいのかわかんないの。」
全部話して、すっきりしてしまいたい。だけど、何から話せばいいのかわからない。
優衣のこと?
あきのこと?
山本くんのこと?
兄貴がいなくなって寂しいこと?
それとも、母さんが死んだときのことから話したらいいの?
わたしが空っぽになった理由から?
そんなこともわからなくって、頭の中がごちゃごちゃになって。苦しい。
ーー苦しいの。自分ではもう抜け出せない。助けて、すくい上げて、息ができない…
「…っ、」
翔子の、潤くんの前なのに涙がこぼれてしまった。
「さつき…」
翔子の声に、ふと隣から握ってくれた潤くんの手の暖かさに、次々と涙が溢れてしまった。
「大丈夫、ずっと聞くから」
しっかりと手を握って、潤くんが力強くそう言った。
「なんでも聞く。何時間でも、皐月が気がすむまで聞くよ。何を聞いても、皐月のこと大事にできるよ」
翔子も、少し涙声になってるけど強く言ってくれる。
「あり、がとう…」
話してもいいの?
わたしは、楽になろうとしてもいい?
ぽつぽつと、わたしは秋と優衣と山本くんに出会ったところから話し始めた。