風
俺は砂浜に座り込んで、女の様子を眺めた。
くるくると変わる表情。
昨日家の前で初めて顔を見た時とはまるで別人だ。
子供みたいにはしゃいで落ち着きがない。
泣いたと思ったら笑って、頑固だと思ったら甘えてきて。
そうだ、ちょうど今見てる海みたいだ。
寄せては返し、返したと思ったらまた寄せてくる。
だけどその波の大きさは様々だ。
ときには予想を超える大きさで押し寄せる。
引き際にはいろんなものをさらっていく。
…そっちに行くな。こっちに来い。
俺の気持ちが伝わったはずないのに、女が俺のほうへ駆け寄ってきた。
「…つまらない、ですか?」
隣に座って不安そうに俺の顔を見上げる。
だからいちいち近いっつってんだろ。
「いや、面白い」
「ほんとですか!」
「お前の行動が」
「なっ…!」
もう!と俺の肩を叩く。
痛くねえよ馬鹿。
「…私が佐伯さんを知ったのは、ちょうど5年前ぐらいです」
なんだ急に?
今更いろいろ打ち明ける気になったのか?
つーか、
「5年前?…だいぶ前だな」
「はい。5年前から、ずっと見てました」