失恋バレンタイン
失恋バレンタイン
毎年、バレンタインにはガトーショコラを作る。


君が、ガトーショコラが一番好きだと言ったからだ。


まるで私が君に従順みたいで、少し気に食わないけど、君の笑顔を見れるなら、少しくらい構わない。


「……俺さ、好きな奴出来たんだよね」


君が、私に恋の話をしたの初めてだった。


微かに顔を赤らめて、照れている時の癖をしてそう言った。


君は、照れると、口を手で覆う。


「えっ!あんたに?どんな子?」


動揺を必死に隠して、いつものからかい口調で聞いた。


「優しくて、素直で、脆そうで強い子」


俯き加減に言った君の目は、まるで愛しいものを愛でるような優しい目。


あぁ、本当に好きなんだな。


見たことのなかったその姿に、素直にそう思った。



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