セカンド・チョコレート

 決戦当日の朝。
 階段の側であたしはその人が来るのを待っていた。
 ちょっと場所的に寒いけど仕方ない。他の人に見られたくないし。


 手の中には、淡いラベンダーとショコラブラウンのツートンでラッピングされた包み。リキュールを効かせた手作りの生チョコだ。
 以前は自分の好みでやたら可愛いのを選んでしまっていたけど、今回は相手の事を考えてちょっと大人っぽさを意識している。去年から成長した証だ。
 絶対に一番になんて食べてもらえない。自分が二番目だって事はわかってても、ちょっとでもセンスいいなとか美味しいとか思って欲しい。せめて誰よりも早く、彼の手に渡る最初のバレンタインチョコになりたい。
 そう思うようになってもう何年だろう。


 元々は既成品を買うつもりで日曜日にあかりんと一緒にデパートの催事場に出かけたけれど、結局これっていうのが見つからずに終わった。悩みながら売り場三周目に入った時に呆れた顔をされたっけ。
 そのあかりんはやけにリアルな蛙の形をしたチョコレートを彼氏の佐伯くんに買っていた。なんで蛙かって訊いたら佐伯くんは蛙が大嫌いで見るのもダメなんだそうだ。私が買ったんだから食べなきゃダメでしょ、と迫るんだって。
 いい歳してなんて嫌がらせ……ドSな彼女を持って佐伯くんも苦労するなあ。まあその蛙チョコも結構有名なショコラメゾンのものですごく美味しそうだったけど。
 結局あたし自身は二時間以上も悩んだ挙句、チョコは買わずに手作り用コーナーで材料だけを買って帰った。

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