如何にして、コレに至るか

「怖い、怖い……。三葉」

さながら、愛しているの言葉に代わるように。

「失いたくない、離れたくない。怖い、怖い。共にする時間が長引くほど、怖くてたまらなくなる。幸せ過ぎて、際限なく君を想い続けて、愛し続けて、怖くなる」

抱く腕の力が強くなる。
なんで、こんなにも弱くなったのか。彼はそう言った。

その気持ちは少なからず、私も分かるところだった。

半ば、一人で生きてきた身だ。
例え周りがいても、自分一人さえ無事ならそれでいい。何が起きても自己責任で“しょうがない”とまとめられるのに。

「私も、弱くなりましたよ」

“自分以外”が出来てしまった時、何かが起きてしまうことへの恐怖を持つ。

しょうがないではまとめられない。何かあってからでは遅い。何かあった時、私はそこにいないかもしれない。あなたに何かあった時、私はのうのうといつも通りの時を過ごしているかもしれない。

「本当に、ずっと一緒にいられるなら、幸せですよね」

彼と共に過ごせるなら、これ以上の幸せはない。

今でさえ幸せなんだ。これで、結婚して、同棲して、子供を作って、長生きして、老後も仲良く生き、出来る限り同じぐらいで死ぬことが出来るなら、本当に幸せだ。

「三葉、泣いている?」

「怖い以外にも、幸せだと泣けるものですね」

彼とは違った涙。

彼が怖い夢(想像)を見るなら、私は幸せな夢(想像)を見る。

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