やっと捕まえた。

新米ママ

分娩室に入って、もう、5時間。
なかなか生まれない。

病院の廊下を言ったり来たり。
「直人。落ち着きなさい!」
親父の声、つうか親父だって落ち着いて無いじゃんか!

「二人とも、座って‼︎」
「葵ちゃん頑張ってるんだから!」

落ち着いてるのは、家のお袋と
葵のお義母さん。
やっぱり、母強し!

看護師さんが出て来た。
「あの〜。葵…。」
「少し、時間がかかる可能性も、念のため輸血の準備を
します。」スタスタっと行ってしまった

「葵…。大丈夫だよな?」不安が俺を
襲う。
頑張れ。頼む元気な顔見せてくれ。

震え出す俺を、
親父が「しっかりしろ‼︎ 葵ちゃんは
大丈夫だ!赤ちゃんも!」

長い待ち時間。
時計の音だけが響く廊下。


分娩室から、「オギャー、オギャー!」
「おめでとうございます。女の子ですよ
母子ともに元気です。御安心下さい。」

やった!産まれた!

「直人。おめでとう。父親だな!」

なんだろう。涙が頬を伝う。
「お父さん!坂口さんのお子さんのお父さん!」

「はい!私です。」
「中にどうぞ。」

経過観察室に、

ベットに寝かせられた葵。
「直人…。」
「葵…頑張った。お疲れ様。」
「女の子だね。直人に似てきっと
美人さんになるよ。」
「葵…。」涙が…。
直人の涙。初めて見た気がする。
なんだかもらい泣き。
手を握り二人で幸せを感じた。

「赤ちゃん抱っこして見ますか?」
緊張しながら俺の腕の中、
スヤスヤ眠ってる。
小さい手。子ザルだ。
でも、最高に可愛い。
直人の優しい目。素敵なパパになるよ。

< 47 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop