TRIGGER!2
 それを聞いたら、風間もジョージも複雑な表情を浮かべている。


「水島先生は何というか・・・あっちの空気が体質に合っていたらしいですよ。原因はそこではないかも知れませんが、研究に没頭するあまりに精神に異常をきたさなかったとも考えられます」


 友香のようにあっちの世界が体質に合わない人間もいるのだ、当然、その逆もあり得る。


「じゃあ、あの医者が忘れっぽいのって・・・」
「あーあれは、千絵ちゃんが向こうに長く居たからだろ」


 彩香の疑問に、ジョージが答える。
 普通の人間が1週間も居れば精神障害を起こし、やがては廃人になるというあっちの世界で。
 要するに、あの女は最初から異常だったと言うことか。
 妙に納得してしまう。


「まぁ何にしろ、当時のこの街は、あの薬が出回る寸前だったんだ。もちろん、あっちの世界でな。それを知ったオヤジは、薬の根源である千絵ちゃんを保護した方が手っ取り早いと思った」


 おかげで本当に直前で、それを食い止められたが。
 峯口らしいと言えばそうなのだが、やっている事は、水島を拘束していた組織と何も変わらないような気がする。
 保護と言えば言葉は優しいが、 誘拐・拘束・監禁とも言えるのではないか。
 だが、当の本人は研究さえ出来れば何処でもいいらしい。
 こっちの世界だろうが、あっちの世界だろうが、パソコンが無かろうが、半ばさらわれているというのに、本人は至って大人しいものだったらしい。


「だけどさぁ、分からなかったのかよ、美和が水島を拘束している連中に絡んでいる事?」


 彩香は聞いた。


「あぁ、美和はこれっぽっちも自分の男の話をしなかったからな。俺とオヤジも、プライベートにまで首を突っ込む程野暮じゃねぇし」


 確かに、ジョージの言うとおりでもある。
 風間はもちろん、当時は峯口もジョージも、薬に絡んでいる組織の親玉と美和がつるんでいるなど、夢にも思っていなかったのだから。
 だが結局は、美和も最初から『薬』に携わっていた訳だ。


「本当は・・・」


 ため息混じりに、風間は口を開く。


「美和がまだ生きているんじゃないかと、今も心のどこかで期待してたんです。あんな別れ方をして、事実が全く飲み込めなかった」
「あの時の隼人は、まともに話が出来る状態じゃなかったからなぁ・・・」


 ジョージはそう言ってタバコに火を点けた。
 その場面を見ていない彩香にも、当時の風間の状態が簡単に想像出来た。
 峯口の所へ身をよせてからも、毎日毎日あっちの世界へ出向き、美和を探して。
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