TRIGGER!2
 あーそうかよ、と彩香は納得して。


「警察の方々は、あっちの世界の事を知りません。当然ドアの事も。まぁ、署長なんかは薄々何かを感じているみたいですがね、何とか誤魔化しましょうね、彩香さん」


 風間の言葉とその薄笑いの視線は、彩香に『余計なことを喋らないで下さいね』と言っているようだ。
 彩香は肩をすくめて、衣装部屋を出た。
 フロアに戻った所で、他の警察官からワンテンポ遅れてゆっくりと高田が店に入ってくる。
 そして彩香を見つけると、大袈裟に手を振って。


「おー、お嬢ちゃん! 偶然だなぁ、こんな所で会うなんて。さっきまで電話で話してたのになぁ。もしかしてワシら、赤い糸で」
「間違っても結ばれてねぇからな。それに白々しいんだよジジイ」


 彩香はポケットからタバコを取り出して、高田を軽く睨む。
 高田は何も気にしない様子で、大声で笑う。


「全くお嬢ちゃんらしい挨拶だなぁ。でも今夜は朝まで密室デートが出来るんだから、それもよしとするかぁ」


 一緒に署まで来い、と高田は言っている。
 ったく面倒くせぇ、と彩香は煙を吐き出す。


「ジョージと隼人も連れて行くんだろ?」
「ま、当然だな。殺人現場に血まみれでいた人間から話を聞かなかったなんて言われたら、俺が来月飲みに行く回数が減っちまうかも知れねぇからなぁ」
「2人とも怪我してんだよ。まず病院だろ」


 彩香が言うと、高田は思い出したように手を叩いた。


「あぁ、言われてみればそうだな。この2人の事だからちょっとどこかにぶつけただけなのかと思ってたわ」
「あ、ついでにあたしも怪我してっから、一緒に病院行くからな」


 血だらけのTシャツをこれ見よがしに見せて、彩香は言った。
 疑いの眼差しを向ける高田。
 そして、彩香に顔を近付けて。


「・・・それにしちゃ元気だなぁ。ちょっと脱いで見せてくれるか?」
「それセクハラで訴えてもいいんだよ、エロジジイ」
「ま、着替えもあるだろうし、お前さん達が逃げるわけはないしな。見張り付きだが、3人で先に病院行ってこい」


 分かったぁ、と、彩香は風間とジョージを連れて、外で待っている救急車に乗り込む。


「大丈夫なのかよ、2人とも?」
「大した事ねぇよ」


 ジョージも風間も、思ったよりも出血が少ない。
 良かったと、彩香は内心胸を撫で下ろした。
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