TRIGGER!2
 どうやらこの仕事は、下準備段階から面倒な事になりそうだ。
 だが終わらせない事には、先に進めない。


「ま、やってみるよ」
「さすが俺が見込んだだけの事はあるな、彩香ちゃん♪」
「触るな気色悪い」


 そうと決まれば、善は急げだ。
 立ち上がりかけて、彩香はふと聞いた。


「隼人の件は・・・どうするつもりなんだ?」
「そうだなぁ」


 カウンターの椅子にもたれ掛かるようにして、峯口は天を仰ぐ。
 だが、その目はけっして穏やかなものではなかった。


「俺たちみたいな輩にとっちゃ、ドアの位置ってのは世界をも動かしちまうような最重要機密だ。それを持ち出したとなっちゃ、黙ってない連中がわんさか出て来るかも知れねぇ」
「あんたは?」


 そんな峯口を真っ直ぐに見つめて、彩香は聞いた。
 今回不可解な行動ばかりしている風間を、峯口はどう思っているのか。
 それが聞きたかった。


「俺か?」


 体勢を戻すと、峯口はタバコの煙を吐き出した。


「風間を見つけたのは俺だ。前にも言っただろ、俺は人を見る目は天下一品なんだよ。まぁ、今回だけは場合によっちゃ少し厳しいお仕置きするかも知れねぇが・・・今はまだ、何とも言えねぇな」


 そっか、と、彩香は立ち上がる。
 だが、足元がフラついた。


「おっと」


 そんな彩香を、峯口は支える。


「今日はもう寝ろ。フラフラじゃねぇか」
「やかま・・・し」


 あれ?
 と、自分でも思う。
 そんなに飲んでいない筈なのに、猛烈な眠気が彩香を襲う。
 そんな中、お勘定とか車を呼ぶとか、峯口の声が遠くで聞こえて。
 彩香の記憶は、そこで途切れた。
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