私だけの魔法の手。



「実はさ……朝、美優が新聞読みながら信号待ってるの見て、なんか俺、すっげぇときめいちまったんだよ」
「はい?」
「前の日も遅くまで残業して帰って、なのに翌朝、コンビニで買った栄養ドリンクの入った袋片手に新聞読んでるんだぜ?」
「…………」
「もうね、あれ見て俺、すげぇ仕事頑張ってる美優を、俺が癒してやりてぇなぁ、って……ダメ?」
「……ダメっていうか…」

膨れ上がっていた乙女心みたいなものが、シュワシュワと解けていくような感覚。
美優?って顔を覗き込まれたけど、私はどう反応していいのか分からなくなってしまった。



だって、やっぱりそれって女としてどうなの?って思ってしまうし。
どうしてそれが好きという感情に繋がるの?って訳が分からなくて、素直に蒼の言葉には頷けないのだ。



この子、ちょっと変わってるのかな?



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